論文執筆のための参考資料
0 「論文」とは?
意見を述べて論議する文章。とくに学術研究の成果を筋道立てて述べた文章であり、
理論、実験結果、調査結果、事例研究の発表などがある。
1 学術論文に求められるもの
・前提として取り上げられた「事実」認識に間違いがないこと
・学問上(美学・美術史学的に)有意義で生産的な問題が提起されていること
・提起された問題が「目的」として明晰に言語化されテクスト構造に反映していること
・提起された問題に関する先行研究が十分に検証され、批判されていること
・提起された問題が合理的な手続きに従って解決されていること
・提起された問題に対する解答(結論)が必要・充分、独創的で説得的であること
2 論文執筆に際して参考になる文献やサイト
・エコ『論文作法』(而立書房)
・シュミット『近代絵画の見かた』(社会思想社「現代教養文庫」)
(→画面記述のための基礎概念)
・「論文・レポートを書くために」
(http://web.kyoto-inet.or.jp/people/b-monkey/howto.html)
・「卒論の書き方」(ではあるが、研究論文の執筆にとっても有益)
(http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/thesis.html)
・論文作成支援関連リンク集
(http://homepage2.nifty.com/katotetsu/ronbun.htm)
・その他、『美学』『美術史』『西洋美術研究』あるいは他大学の美学美術史学
関係の研究室紀要などに掲載された雑誌論文を参考にすること
他大学の研究室紀要に掲載される修士論文の梗概なども役に立つ
(学術雑誌や紀要に目を通すことで自分たちのバイアスをチェックし、
基本的な研究方法論を身につけていくこと)
3 「研究」とは?
一般に(先行研究で)……と思われているが、じつは……だということを証明する作業
定説や常識の裏側に回る新鮮な発想と、説得力のある着実で実証的な論証が必要
(必要条件としての客観的普遍妥当性と充分条件としてのインパクト)
・大学院はアマチュアではなくプロ集団→「美術が好き」というだけでは通用しない
→問題意識を持つこと、そして、その解決方法を知っていることが重要
4 先行研究について
・「先行研究」は、それにこだわる理由を考えてから言及すること
(リストを出すだけならコンピュータでも自動的に提供してくれる)
(問題はそれに言及する理由の明確化:限界や誤りの指摘→別仮説提案へ)
・歴史研究の基本は、現象Pの成立要因X(Xは多様な要素の複合体)の解明
→この説明プロセスのなかで先行研究の問題点を指摘して、代替仮説の提案立証へ
5 論文執筆のためI必要な基礎的能力
1 論理構成能力、問題発見能力、事例密着能力
→文章作成、翻訳、討論、文献紹介と内容理解、テクスト(画像)構造分析
2 美術研究者としての常識
・ヨーロッパ(グローバル)美術史の基礎知識
・美学芸術学理論関係の基礎知識
・コンピュータ・リテラシー(データベースや画像処理、インターネット)
・参照文献の収集と記述方法(図書館情報学)
・作品情報の収集と記述方法(レジストレーション)
・論文作成やプレゼン、ディベートの基礎技術
3 最後に(last, but not the least)人間形成の重要性